『おやしらず』のお話
皆さん、こんにちは。「川越駅西口 徒歩1分」にあります川越ホワイト歯科クリニックです。
親知らず(おやしらず)ってなんだろう???
お口の中の歯は、2歳半~3歳くらいで、乳歯が生えそろいます。
上下左右、5本ずつ。計20本です。
その後、5歳半~6歳くらいから通常は、下の前歯が永久歯に生え変わって、
6歳くらいに、新しい歯、6歳臼歯(第一大臼歯)が、前から6番目の歯として生えてきます。
さらに、乳歯が永久歯に生え変わりながら、
12歳くらいで、また新しい歯、12歳臼歯(第二大臼歯)が、前から7番目の歯として生えてきて、15歳くらいで永久歯が生えそろいます。
上下左右7本ずつ。計28本です。
12歳くらいになると、歯磨きは自分でできるため、こどもは親の仕上げ磨きなどから手をはなれていきます。
そして、16歳~20歳くらいになると、またまた新しい歯が生えてきます。
この最後に生えてくる前から8番目の新しい歯が、18歳臼歯(第三大臼歯)⇒親知らず(智歯とも呼ばれる)です。
親知らずの名前の由来は、歯が生えてくる時期は、親の手がはなれており、親に知られることなく生えてくるからと言われています。
英語では、wisdom tooth(知恵歯)といい、物事の分別がつく頃に生えてくることに由来しています。
ハングルでは、サランニ(恋の歯)といい、恋をする頃に生えてくることに由来しています。
親知らずは、人によってとても様々です。
上下左右4本全てある人、1本だけない人、・・・・・・、生まれつき1本もない人、と様々です。
「親知らずは抜かなければならないの??」という質問がよくあります。
その質問に全ての人が当てはまる答えはありません。
というのも、親知らずの状態や全身状態が人によって、千差万別だからです。
現代人の顎は、大昔に比べて、比較的小さくなってきていると言われています。
大昔の人は、調理技術があまり発達していなく、固いものをそのまま食べていたため、十分に顎が発達し、親知らずもしっかり生えていました。
現代では、調理技術は格段に進歩し、大昔ほど咬む回数や力が必要なくなったために、十分に顎が発達しない傾向があります。
その上、現代では栄養も十分に摂取できるため、親知らず自体も十分な大きさになる傾向もあります。
第二大臼歯の後方に十分なスペースがあれば、親知らずは正常に生えることもあります。
しかし、十分なスペースがなければ、横に生えたり、変な方向で生えてきます。
正常に4本生えそろうことは、少ないです。およそ30%くらいと言われています。
親知らずは、生えてくる時、歯ぐきを押しのけて生えてきます。または、横に生えている時は、完全に生えない状況がずっと続きます。
このため、少しだけ歯が歯ぐきから出てきている状態は、歯と歯ぐきの間のブラッシングはとても困難で、汚れがたまりやすく不衛生になります。
汚れがたまると炎症を引き起こして、腫れ・痛みが強く出て、場合によっては、お口が開かないようになってしまいます。
この症状は、抗生物質・消炎鎮痛剤を飲むと、一時的に症状は改善しますが、根本的な解決にはなっていません。
1度でもこのような症状が出た場合は、今後さらに悪化して再発することが予想されるので、抜歯が必要です。
ただ、親知らずは全て抜く方が良いというわけではありませんので、
親知らずを抜歯した方が良い場合、親知らずを抜歯しない方がいい場合を説明いたします。
<親知らずを抜歯した方が良い場合>
①先程述べた、炎症を起こして腫れ・痛みが出た
⇒もうすでに、汚れがたまりやすい状態です。口臭の原因にもなります。炎症が繰り返され、症状もどんどん悪化するので抜歯をオススメします。
②親知らずにむし歯がある
⇒汚れがたまっていたのでむし歯になっています。治療も器具が奥まで届きにくく、不十分な治療になる可能性があります。
治療しても、再度むし歯になる可能性が極めて高いです。手前の大事な歯、第二大臼歯もむし歯にする可能性があります。抜歯をオススメします。
③親知らずが横に生えていて、手前の歯に影響を及ぼしている
⇒親知らずは横に生えていると、手前の大事な歯、第二大臼歯の根を溶かしてしまうことがあります。
また、親知らずと第二大臼歯の間に大きなむし歯ができることがあります。いずれの場合も抜歯をオススメします。
④矯正を考えている、もしくは矯正をしたことがある
⇒親知らずは生える方向に力がかかりますので、親知らずの前方の歯を動かす力があります。
そのため、矯正をする際に予定通りに動きにくかったり、矯正後に後戻りをする要因となります。矯正の前後では、抜歯をオススメします。
⑤骨の中に完全に埋まっているが、レントゲンで親知らずの周りに膿の袋ができている場合
⇒膿の袋を、嚢胞といいますが、これはすでに顎の骨の中に病気があります。できるだけ早く、口腔外科専門の病院へ紹介いたします。
<親知らずを抜歯しなくて良い場合・できない場合>
①親知らずが、まっすぐ正常に生えていて上下で咬み合っていて、むし歯が全くない状態
⇒咬み合わせが通常より多くラッキー!!!抜歯する必要はありません。
②顎の骨の中に完全に埋まっていて、レントゲンでも問題なく、全く症状がない
⇒過去に全く症状がなく、全然生えていないのであれば、ムリやり抜歯する必要はありません。
しかし、症状が1回でも出た場合は、抜歯した方が良いかもしれません。
③第一大臼歯・第二大臼歯に問題があり、近い将来抜歯になる可能性が高い場合
⇒親知らずが、ある程度正常に生えている場合、第一大臼歯・第二大臼歯を失った時にBr(ブリッジ)や入れ歯(義歯)の土台として使える可能性があります。
また、失った歯の代わりに移植をすることができるかもしれません。
適応な状態かどうかは、歯科医師への相談が必要です。
④骨粗鬆症のお薬を長期間服用している場合
⇒整形外科で、骨粗鬆症の治療薬として第一選択で使用されているのが、ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)というお薬です。
これは、骨粗鬆症の治療薬として、とても良いお薬なのです。
しかし、このお薬を3年以上内服していると、抜歯などの外科手術がきっかけとなり、顎の骨が腐ってしまう病気になる可能性があります。
骨粗鬆症のお薬を3年以上服用している方は、注意が必要です。
⑤全身状態が手術に耐えられない場合
⇒高血圧の数値がかなり高い場合、糖尿病が重度の場合などは手術自体ができません。
いずれの場合も、抜歯は大なり小なり、外科手術ですので、注意が必要です。
抜歯後に、しびれが出るような場合もありますので、歯科医師とよく相談してから抜歯するか決めましょう!!!
あと、親知らずを抜歯すると小顔になる!という噂がありますが、答えは、ほぼNoです。
下の親知らずを抜歯した後、ほっぺたが腫れることがよくありますが、その腫れた時に比べて元に戻ったら、小顔になったと錯覚するようです。
ほぼないと言ってよいでしょう!!!
~さいごに~
今回のお話とは全く関係ありませんが、新潟県の糸魚川に親不知(おやしらず)という場所があります。富山県のすぐ近くです。
ここは、今でこそ北陸自動車道・国道8号・電車が通っていて、通行に支障はあまりありませんが、
昔は海岸沿いの断崖絶壁の要所で、断崖絶壁と打ちつける日本海の荒波に、旅人は苦しめられ、
波打ち際を駆け抜ける際は、親は子を忘れ、子は親を顧みる余裕がなかったことから、親不知・子不知と呼ばれるようになったそうです。
また、平清盛の弟である、頼盛の夫人が夫を慕って親不知を通りかかった際に、2歳の我が子をふところから取り落としてしまって、波にさらわれてしまったそうです。
悲しみに暮れて詠んだ、「親知らず 子はこの浦の波まくら 越路の磯の あわと消えゆく」の歌にも由来していると言われています。
おやしらずつながりでした。ご興味のある方は、是非どうぞ。